[審査を終えて 審査員総評]


 榎本卓朗(アートディレクター/クリエイティブディレクター)

今年もたくさんの応募、誠にありがとうございます。
さて今回は、お子さんたちが描く絵に今年のコロナ禍がどういった影響を与えるのだろう・・・。
実は、それが一番気になっていました。
もちろん、こういったコンクールに、親御さんとお子さんが一緒になって協力して応募頂いているので、そもそもがしっかりとした親子関係が築けている証拠だと思うと、コロナにおける心の傷みたいなものは少ないだろうと思っておりました。
案の定、ああ…本当に好きなんだなぁ?というものを、めいいっぱい自由に描いたものが多かったです。ほっ・・・良かった良かった。
ただ、例年よりは友達と遊んでいる風景みたいなものは少なかったように思えます。でもそれは仕方がない事です。誰のせいでもないですから。

個人的な話ですが、仕事仲間のお子さんも絵が大好きで、最近時間がある時はずーっと描いているみたいなんですが、もしかしたら描くことによって心のバランスを取っているんじゃないかな?とその人は仰ってました。確かに絵を描くことによって「自分だけの世界」を作り上げていく作業は、今年のように非常に悩ましい世の中で、自分と楽しい世界を繋ぐ どこでもドアのような役割を担っているのかもしれないなあ…とふと思ったりもしましす。
むしろお子さんたちが自宅で過ごす時間が今までよりも増えたのをチャンスと思って、どんどん描きまくって想像力やモノを見る目を養って、グングン自分の血肉にしていく事こそ大事な気がします。筋トレも絵画もやった数だけ必ず自分に還ってきますから。
但し、続けていく事こそ全てだと思います。 

今年ちょっと面白かったのは、おいしそうな食べ物をストレートに描いている作品が目立った事。
審査させて頂きながら、思わずお腹が鳴ってしまいました 笑 いや、ほんとに。
食に対するストレートな欲求。これぞ人間です。本能に訴えかける絵は、強いです。
広告の仕事も結局はそういった本能に訴えかけるCMだったりポスターが印象的に人々の共感を得ます。
おいしいものを食べればだいたいの事はなんとかなる。大丈夫!って思えるんです。
なんだか審査しているこちらの方が、皆さんの絵に元気をもらって申し訳ない気持ちになりました。
来年も素晴らしい作品をお待ちしております!


 シゲタサヤカ(絵本作家)

いやはや、まさか世の中がこんなに大きく変わってしまうなんて…。本当に大変な年になってしまいましたね。
みなさんも園や学校がお休みになってしまったり、思いっきり外へ出て遊ぶ機会が減ってしまったり…いつもとは全く違う日々を過ごしていたことと思います。

そんな中「コンクールは例年通り開催します」との連絡をいただいた際は、嬉しい反面、実はほんの少し身構えてしまう気持ちがありました。「いつものような元気で楽しい作品に会えるかなあ。いや、そもそもこんな大変な日々のなかで、みなさん応募してくれるのかなあ…」なんて不安があったからです。
でも、そんな心配は全くいりませんでした。フタをあけてみればいつものようにパワフルで素晴らしいたくさんの応募作!
どの作品からも全力でお絵かきを楽しむみなさんの姿が伝わってきて、心からホッとしました。

お家の中でじっくりお絵かきをする時間が増えたためでしょうか、とにかく力作揃いで例年以上に選ぶのが大変だったくらいです!
みなさん、本当にたくさんのご応募をありがとうございました。

どんな状況でも「大好きなもの」は変わらないし、それを絵に描く楽しさも変わらないのですね。
「どんな時でも紙と画材さえあれば、なんでも描けるし、どこへでも行ける。いくらでも楽しい気持ちになれる!」と、改めてお絵かきの可能性を感じた審査でした。
やっぱりお絵かきはいいなあ…。みなさん、これからもたくさん絵を描き続けてくださいね。