[審査を終えて 審査員総評]


 榎本卓朗(アートディレクター/クリエイティブディレクター)

今回で2回目の審査になりましたが、相変わらず力の入った力作ばかりで、非常に楽しく審査させていただきました。
いや、はじめは本当にただの白い紙なんですよ。
それがのびのびとしたお子さん達の想像力・記憶力・感性が爆発して、まるでビッグバンの様に無限に広がっていく。
何もなかった世界に、潰れたクレヨンでゴリゴリと力強く描く。これでもか!と命の銀河を作っていく。
ああ、そうか、こんなにも見えている景色が違うのか…と本当に驚きます。
僕らが住んでいる世界はこんなにも色鮮やかで、キラキラとしているんだなぁ…と大人の汚れた目では見えない何かがもう眩しくて眩しくて…。
自分もかつてはそうだったはずなんですけどね…涙
最近も新たにナスカの地上絵が発見されたみたいですが、有名なラスコーの壁画もそうなんですけど、絵って究極は人が「生きた証」なんだと思います。
幼少時代の絵にも色々な情報がたくさん隠されています。
その時々の感情や思い出が確かにそこに存在している。楽しかった事、悲しかった事。言葉にできない何かを詰め込んだ色鮮やかなタイムカプセル。
お子さん達にはこれからもその眩しい感性で、それぞれの自分だけのタイムカプセルを描いていって欲しいなぁと思いました。


 かめおかあきこ(絵本作家)

今年で2回目の審査参加となりますが、昨年同様選ぶのに大変苦労するほどの力作ぞろいでした。
皆さんの「大好き」が絵を通して伝わってきました。
1枚の絵の中で色んな画材を使い素材の違いを表現したり、筆のタッチを生かしたり、光と影を表現したりと、絵の技法や技術的にも素晴らしい作品ばかりでした。
今年は3枚の絵をつなぎ合わせて1つの作品にするというアイデアもあり、これはよく考えたな!と感心しました。
また、鉛筆だけで描いた作品もありました。妖怪たちが描かれていて、モノクロの世界がぴったりでした。
他の人と違う方法やアイデで自分の作品を表現するのは、アーティスト(皆さんは小さなアーティストです)に大切なことだと思います。
それだけで印象に残ります。これが個性になっていったら素敵ですね。
動物や虫や恐竜も毎年人気ですね。特徴をつかんでよく観察して描かれていました。
強い動物は大きく堂々と、美しい昆虫などは色とりどりに。見ていて楽しくなりました。
大好きな家族、大好きな食べ物、色んな大好きが素敵な作品になるのは、「大好き」だから。
なので絵を描くこともずっと大好きでいてください。そうすれば素敵な作品がもっともっと生まれることでしょう。
そして大好きなものもどんどん増やしていってください。
何でも食べて色んな人に会って、色んな体験をして。それをまた作品にして見てせください。
楽しみにしています。


 シゲタサヤカ(絵本作家)

昨年に続いて2度目となった今年の審査も、とにかく楽しませていただきました。
どれくらい楽しかったかといいますと、あまりにみなさんの作品が素晴らしく、途中で審査を忘れ、純粋にじっくりと鑑賞を始めてしまったくらいです。
まるで美術館を訪れて絵画展を観ているような…そんな気持ちで全ての作品を楽しませていただきました。

また、これは昨年も感じたことですが、子供たちの「大好き」に対するエネルギーがすごいこと!
どの作品からも「ここが好き!」「これが好き!」という強い想いが溢れていて、自然とこちらの気持ちも盛り上がってきます。
そして「好きじゃないものが一切描かれていない絵」って、こんなに心地良いものなんだなあ…としみじみ感じることができました。

大人になって仕事で絵を描いていると、どうしても必要に応じて「自分が特に好きではないもの」を描く機会も増えてきます。そういえばもう何年も「好きなものだけが詰まった絵」って描いていないなあ…と、ハッとしました。
「私もたまには、思いっきり大好きなものだけ描いてみよう!」
そんな気持ちにさせてくれた今回の審査でした。ステキなひとときをありがとうございました。