[審査を終えて 審査員総評]


 榎本卓朗(アートディレクター/クリエイティブディレクター)

今回、初めて参加させていただきましたが、こんなにも沢山の「大好き」という熱量に溢れている絵画達はどれもが生きているようでした。
しかし改めて思うのは「好き」の力はすごいという事。
その中でちょっと面白い発見だったのは、低学年と高学年のお子さん達の好きな対象物の変化です。
共通して言えるのはとにかく「生き物」が大好きなお子さんが多いのですが、0~5歳の頃の好きな生き物は、割と架空の「怪獣」や「恐竜」みたいな迫力満点の生き物が多い。
6~9歳になると好きな対象が、魚や鳥や動物といった割と身近な癒し系の生き物たちに変わっていくんですね。
このように、絵を見るとお子さん達の心の変化や成長がわかりやすく伝わってきます。
僕自身は幼い頃から言葉で伝える事が苦手だったので、絵を描く事によって友達や大人達とのコミュニケーションをとってきた記憶があります。
むしろ絵を描く事は自分を理解してもらう為の最大の「武器」と言っても過言では無かった。と、今になってはそう思います。
絵を描くという行為は、自分の思い通りに鉛筆やクレヨンや筆を走らせ、誰にも縛られることのない自由な世界を創造していく。
それはゼロから何かを生み出すといった、ある意味小さな成功体験を繰り返しているのかも知れません。
それがお子さんにとってどんどん自信にも繋がると思いますので、心の成長のためにも、是非お絵かきを続けていく事をオススメしたいと思います。
とにかく皆さんの作品に圧倒され、逆にこちらが勇気をもらいました…ありがとうございました!


 亀岡亜希子(絵本作家)

Grimmお絵かきコンクールの審査委員を初めてやらせていただきましたが、集まった皆さんの作品を前にして「大変な審査になりそうだ!」と思ってしまいました。
なぜなら、あまりの力作ぞろいだったからです。
色んな大好きがあって、大好きな気持ちがあふれていて、いちいち「わー」だの「あー」だの言いながら審査を進めなくてはいけないほどでした。
さまざまな表現方法がありました。
ただ描くだけではなく、何かを貼付けるなど技法を駆使した、まさに小さなアーティストたちの作品でした。 力強い絵、家族の愛を感じる絵、季節の美しい絵、ユーモラスな動物の絵、物語がうまれてきそうな絵、スポーツの絵、美味しいものを食べている絵、不思議な世界の絵などなど。
らくがき、お絵かきのレベルをこえる作品ばかりでした。
絵を描くことも何かを作ることも、楽しいと思えることがとても大切です。
楽しいと思えることにたくさん出会って、楽しいと思えることに挑戦して、楽しいと思えることを見つけて、そんな楽しいことをこれからも自由な発想で絵にして描き続けてほしいと願っています。


 シゲタサヤカ(絵本作家)

審査はとにかく「面白かった!」の一言につきます!
こんなにたくさんの子供たちの絵を一度に見せていただくなんて初めてのことでしたが、初めの1枚から終わりの1枚まで、もうずっとワクワクしっぱなしでした。
どの作品からも「本当にこれが大好きなんだなあ~」というのが伝わってきます。
そして何よりも「子供のお絵かきの自由さ」に驚かされてばかり!
「なんと!ここにこの色を持ってくるのかー!」「わあ!こんな構図、絶対大人には描けない!」「えっ?どうやって描いたらこんな形になるの?すごい!」そんな感想が次から次へとあふれます。
紙のサイズなんかまるで意識することもなく、ただただ思いのままに自由に手を動かしている子供たちの姿が目に浮かんで、こちらまで楽しくなります。
「絵を描くことの面白さ、楽しさ」を改めて子供たちに教えてもらうことができた……そんなステキな審査でした。
どうかこれからもこの気持ちを忘れることなく、たくさん絵を描いてくださいね!